10日目「9日かかった道を1時間で帰る」

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朝5時半、岩本寺の宿坊で目が覚めた。
前夜は窪川の居酒屋で四万十川上流淡水漁業協同組合の池田組合長、高知新聞窪川支局長の楠瀬さんと竹内記者の4人で食事をした後、窪川の釣りバカたちが集まる家で「家飲み」して午前様になった。岩本寺の山門はすでに柵で閉じられていて、それを乗り越えてのご帰還であった。幸いにも玄関には鍵がかけられていなかったので、無事、部屋に入ることができた。真面目なお遍路さんならば、宿坊に午前さまで帰ることなどたぶんないであろう。罰当たりなことである。
贖罪のつもりだったわけではないが、翌朝の6時からの本堂の勤行に参加した。深酒はしなかったので、とても爽やかな朝の気分である。
岩本寺には、不動明王、観世音菩薩、阿弥陀如来、薬師如来、地蔵菩薩の5つのご本尊が祀られている。ご住職の窪さんによると、明治時代の神仏分離令とその後の廃仏毀釈運動などに翻弄された結果、最終的に岩本寺に5つの仏様が合祀されることになったのだという。だから住職の読経の中には真言が5つも読み込まれている。なんか得をした気分になる。読経の間、黒ちゃんは昨晩の深夜帰宅の不始末を詫びて頭を下げ続けた。

朝9時に荷物をまとめて岩本寺の宿坊を出発した。高知市に向けてそのまま窪川駅に向かうのが当初の計画であったが、目下「釣りバカ街道まっしぐら」の竹内記者の強い希望もあって(笑)、前出の池田さんのクルマで四万十川上流の大野見に向かった。そこで解禁になったばかりの鮎の友釣りをしようというのである。
さすがに鮎釣りの道具は持ってきていないので、楠瀬支局長が前日奔走してどこかから調達してきてくれた人さまの道具での釣りである。忙しい支局長を、こんな用件でさらに忙しくしていいのだろうかと、少し反省する。
半年前にアオリイカ釣りで「高知釣りバカ倶楽部」(実際にはありません。念のため)に加入したばかりの竹内記者、当然鮎釣りは初体験である。全長9mの竿「人生で持った最長の棒」(本人談)でなんとか人生最初の一匹を釣り上げて、今回のお遍路ードの全てのメニュー終了。組合長に窪川駅に送っていただいた。

我々の乗る窪川駅14時2分発高知行き「あしずり6号」の高知駅到着時刻は15時4分。9日間かけてコツコツ歩いた高知→窪川間を、わずか1時間で結んでしまう近代交通システムのスゴさを実感すると同時に、人の足のみが移動手段だった時代のリアルな距離感の喪失を想う。
歩き遍路の楽しさの真髄は、自然の一部としての人間の足が遺伝子レベルでかすかに記憶している「移動の喜び」とでもいうものを、あるいは坂本龍馬の時代の土佐の時間感覚を、束の間体験するからなのかもしれない、と気づいた。

お遍路ードの第一ミッション「はりまや橋➡︎31番竹林寺➡︎37番札所岩本寺」編の様子をブログでお伝えする黒ちゃんの「釣りときどきお遍路日記」は、今回で終了です。次の「37番岩本寺➡︎38番金剛福寺」編のブログは、6月後半スタートを予定しています。
ここまでのご愛読ありがとうございました。