7日目「トンネルの天国と地獄」

歩数 20079歩
距離 16,6km

竹林寺をスタートし、岩本寺までを目指す5月のお遍路ードだが、出発7日目にしてようやく本格的な山道に突入した。須崎市から先、四万十町までは焼坂と久礼坂という大きな峠を2つ越えるルートが待っている。黒ちゃんは竹内記者と相談して、これまではほとんどトンネル内を歩く必要のない、あるいはあえて歩かないルートを選んできたのだが、須崎から先はそうはいかない。新荘川(しんじょう)を渡ってすぐ、下分乙で初めて本格的な長さのトンネル内を歩かざるをえなくなった。
自動車と同居して歩くトンネルの中は歩き遍路にとって「天国」と「地獄」が同居する悩ましい場所である。まず、炎天下の国道を歩いてきてトンネル内に入ったとたん、サーッと気温が下がり冷房のよくきいたレストランに入ったようにホッとする。身体中の熱気が抜けていく。これが「天国編」。
一方、トンネルの中に車が侵入してきたとたんにものすごい暴力的な騒音が前や後ろ、上からも襲ってきて、車がトンネルを抜け切るまで延々と、しかも共鳴、増幅しながら続く。これが「地獄編」。
涼しさをありがたく感じるか、騒音を忌み嫌うか、歩き遍路にとってトンネル内歩行は大変に悩ましい環境なのである。
車と一緒に歩く遍路道をなるべく減らして、歩き遍路専用道を作るべきだと以前から主張している「お遍路ードプロジェクト」であるが、出発7日目にしていよいよ確信を強くした黒ちゃんであります。

柳屋旅館前をスタートしてから5,5km、竹内記者が「とってもステキな休憩所があるから寄りませんか」と言うので、国道脇のJR土讃線安和駅に行く。改札はなくホーム上にポツンと小さな待合所があるだけの無人駅のホームに立つと、眼下には信じられない大パノラマが展開していた。
均整のとれたアーチ型の砂の海岸線に白い波が細い縁どりを作っている。そしてその先にやや濃いめの青色がずっと水平線まで続いている。待合所の浅い屋根がベンチにちょうど良い日陰を作っていて、そこはまるでお大師さまが黒ちゃんと竹内記者のために予約しておいてくれた指定席みたいに居心地がいい。
この特等席からわずか20mしか離れていない国道をお遍路さんは通過しているのだから、小さな看板でもいいから「←お遍路さん指定席」という看板を出してあげたいと思った(笑い)。駅の時刻表を調べてみたが、安和は特急通過駅なので、各駅停車のみ上下あわせて一日15本しかこのホームには停まらない。通学時間を外せば、たぶんゆっくりのんび美しい安和海岸と土佐の海を観賞できる「ゆっくり遍路派」には見逃せない立ち寄りスポットです。

さて、安和駅の特等席で休憩した後、海岸でシロキスの投げ釣りをしていた若者たちを冷やかし、国道の焼坂トンネルを避けて、遍路古道がある焼坂峠へ向かう。かなり急な登山道を1時間ほど、はあはあ息を切らせながら登り切ると焼坂峠であった。眺望はきかないが、汗をかいてもすぐ乾く、風のよく通る気持ちのいい古遍路道だった。下りはそれほど傾斜がきつくない快適な登山道が沢沿いに続き、高速道路の脇をすり抜けて国道に復帰、2,5kmほどで久礼の市街地に至った。焼坂峠越え、先を急がない「ゆっくり遍路」さんにぜひお勧めしたい寄り道プランです。